はじめに
109シネマズ名古屋でインドの大ヒット作「パターン」を観にきました。「RRR」に続いて、映画館で見た2つ目のインド映画でした。
【公式】映画『PATHAAN/パターン』オフィシャルサイト
9/1(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
本日時点の情報ですが、
IMDb:5.9/10
映画.com:4.1/5 という評判になっています。
見ての通り、世界中では評価がやや低めですが、日本では割と高評価です。
自分はアクション映画への関心が低いので、期待値も高くなかったのですが、実際に観てみたら興味深く感じて楽しんでいました。中国出身ということもあり、どうしても中国の映画や社会事情と色々比べてしまうのですが、そういった観点も含めて感想を書いていきます。
アクション映画としてのクォリティ
インド版「ミッション・インポッシブル」ともいえるほど高い水準と思います。
アクションシーン
インドに限らず、ドバイ、スペイン、トルコ、ロシアなど複数の国で撮影されました。自然や都会などの壮大な景色をたくさんエンジョイできます。また、秘密基地や列車、ヘリコプター、謎の飛行機でのファイトシーンが多く、制作費の膨大さを感じていました。
ただ、映画が長いせいか、後半に入ったらアクションの部分になんとなく飽きてきました。 ストーリーについて、他の多くのアクション映画にも言えるが、ありきたりな内容となり、特筆すべきことがあまりないです。
キャスト陣
非常に豪華。
男性主人公のパターンの出演者はボリウッド「3人のカーン」の1人であるシャー・ルク・カーンであり、野性的な魅力が溢れています。
女性主人公のルバイは、とにかく美しくてセックシー(言葉失う、、、)。美人すぎて登場したら他のものがあまり頭に入らなくて、彼女ばっか見てしまいました。今ポリティカルコレクトネスが行きすぎたアメリカの映画ではなかなか見れないシーンではないかと思います。 美男美女である上で、演技もうまく、10点満点です。
所感
ナショナリズムの時代
パキスタン軍が企んだインドに対するテロ攻撃に対抗するストーリーから、主人公たちが何度も「インド万歳」など国への忠誠心を示すセリフまで、パターンは愛国主義が中核であることに間違いありません。
RRRも同様に、英国植民地時代のインド人たちがイギリス人をぶちのめすような、ド愛国主義的映画でした。
このような映画は、中国出身の私にとって馴染みがあります。共産主義の中国では、反日、反米をテーマにしたドラマや映画が多々あって、テレビや学校でよく放送されます。
実際、中国での興行収入上位の映画を確認すると、
― 中国歴代興行収入上位の映画一覧
順位 邦題 興行収入 (単位:億元) 公開年 1 1950 鋼の第7中隊 57.7 2021 2 戦狼 ウルフ・オブ・ウォー 56.9 2017 3 こんにちは、私のお母さん 53.6 2021 4 ナタ~魔童降臨~ 50.4 2019 5 流転の地球 46.9 2019 6 唐人街探偵 東京MISSION 45.2 2021 7 アベンジャーズ/エンドゲーム 42.5 2019 8 1950 水門橋決戦 40.6 2022 9 オペレーション:レッド・シー 36.5 2018 10 唐人街探偵 NEW YORK MISSION 34.0 2018
トップ10位の中で、5つ(ハイライト表示)もが愛国を謳う映画です。中国国内での興行収入が非常に高い一方で、5番目の流転の地球を除き、海外での収入が芳しくありませんでした。そもそも、海外で発行しないことも多く、国内観客のみをターゲットとしています。 それに対して、「RRR」「パターン」といった映画は、愛国主義的映画であることにも関わらず、世界中からなかなかの反響を得ており(賛否両論だが)、収益を確実に得ています。 1.3億ドル(約192億円)の世界興行収入に達成したパターンは、ボリウッドの実力だけではなく、グローバルにおけるインドの文化的影響力が強まった証拠の一つになっているではないでしょうか。
エンターテイメントコンテンツには、イデオロギーが多かれ少なかれ反映されています。イギリスの旧植民地で、相対的に資本主義と民主主義の国であることから、インドから発信されたものは、アメリカを始めとする先進国にとって比較的受け入れやすいかと考えられます。
国が採用している体制が、グローバル関係でのスタンス、さらにエンターテイメント産業の盛衰まで影響を与えることが、興味深く感じています。
宗教の宣伝
パターンでは、イスラム教・ムスリムを讃えたシーンがありました。ヒンドゥーナショナリズムが急速に進んでいるインドでは、こういった内容に違和感を感じた方がいらっしゃるかもしれません。 パターンの出演者、シャー・ルク・カーンがムスリムという事実と照らし合わせていくと腑に落ちます。 前述したボリウッドの大物俳優「3人のカーン」は、「カーン」から察するに、3人ともムスリムです。インド映画の史上もっとも成功した俳優、こういったレベルに達したら、影響力を発揮して、大事にしている価値観や宗教観を得意とする映画を通して宣伝していくこと自体はおかしくありません。 当然、インド国内のヒンドゥー教徒から激しく反発されることもありますが、コツコツと発信していくと、大衆文化に浸透することが十分ありえると思います。